2015年1月20日火曜日

初めに何を飲んだらいいか 〜ニッカ「宮城峡」(ノンエイジ)〜


「ウイスキーを飲んでみたいけれど何を飲んだらいいか分からないのですが」と何人かに言われました。

そんな方にはとりあえず、ニッカの「宮城峡」かサントリーの「山崎」をおすすめします。この二つはジャパニーズ・ウイスキーのいわゆる「シングルモルト」と呼ばれるウイスキーの代表的な銘柄の一つです。

僕はニッカ党なのでニッカ「宮城峡」を特にお薦めします。

宮城峡はウイスキーというよりはブランデーに近いフレーバーとテイストを持っており、ウイスキーの独特の風味である「煙臭さ」があまりなく、逆にフルーティさが強調された華やかな味わいです。1万円を超えるようなハイランドスコッチに負けないほどの深い味わいが、わずか1500円(ノンエイジ)で手に入ります。ニッカのモルトはこのコストパフォーマンスの良さも魅力です。

山崎は日本人の「日本食」に慣れた舌にも優しい味わいですが、宮城峡はそこまで日本人の舌に合わせている訳ではなく、スコッチのシェリーカスクに迫るコシとコクが持ち味でバニラ香も強くブランデーやチョコレートのような味わいを持っています。


ちなみに「シングルモルト」とは一箇所の蒸留所で蒸留〜熟成されたモルトウイスキー(大麦だけで作られたウイスキー)のことを言います。
宮城峡は宮城県仙台市にあるニッカの宮城峡蒸留所で作られたモルトのみを使用しています。サントリー山崎は大阪府山崎蒸留所のモルトです。

何箇所かの蒸留所のモルトをブレンド(バッティング)して作られたウイスキーは「ピュアモルト」と言います。ニッカの場合、余市と宮城峡をバッティングして作られた「竹鶴」がそれに当たります。
なぜこんなことをするのかというと、ウイスキーは蒸留所によってまったくできるお酒の味や個性が違うからなのです。
個性の違う蒸溜所のお酒をブレンドしてさらに美味いウイスキーが出来上がります。
ニッカ「竹鶴」は「余市」のスモーキーフレーバーやパンチと、「宮城峡」のフルーティさを兼ね備えた素晴らしいウイスキーです。

シングルモルトやピュアモルトではないウイスキーは「ブレンデッド」と呼ばれます。これはモルトウイスキーの他に、グレーンウイスキーと呼ばれる、とうもろこしなど雑穀で作られたウイスキーをブレンドします。
スコッチなら「オールドパー」や「ジョニーウォーカー」ジャパニーズなら「スーパーニッカ」や「サントリーオールド」がそれに当たります。

モルトは味が強く濃いウイスキーになりますが、その分クセも強くなります。
ブレンデッドはスッキリとした味わいと、馴染みやすい「薄さ」が持ち味になります。
元々グレーンウィスキーはモルトウイスキーよりも効率良く安く作られる「混ぜ物」として存在していましたが、現代ではどちらが優れているとか高級とかそういう事ではなく、嗜好性の違いで分けられています。中にはグレーン100%のウイスキーもあります。

しかしやはりウイスキーの本来の美味しさや個性をわかりやすく味わいたいのなら、やっぱりモルトが適しています。
モルトは例えば焼酎以上に、銘柄による個性があります。焼酎なら芋と麦の個性ははっきりしていますが、モルトウイスキーの場合、同じ大麦を使っていながらその違いは芋麦どころか日本酒とワインほど違うことも少なくありません。
宮城峡はそのモルトの個性、違いが特にはっきり分かるお酒だと思います。


ところでワインがそうであるように、ウイスキーもヨーロッパの料理の味覚にある程度慣れてないと美味いと感じられない人もいるかもしれません。

本場のフレンチやイタリアンを誰でも気軽に食べられるようになったのが1980〜90年代、その頃にやっと日本にもカベルネ・ソーヴィニオンなどフルボディの赤ワインやヴィンテージが定着しました。それまでは日本料理に合わせた若い白ワインやロゼが好まれていました。

ウイスキーは料理と合わせるお酒ではないのでワインよりは神経は使わずに済みますが、それでもやはり単独で味わうには嗜好性の敷居はやや高いかもしれません。

それで長いこと水割りやハイボールという、ウイスキーの味をより薄めた飲み方が定着しました。
しかしウイスキーの味を一度知ってしまうと、水割りやハイボールではどうしても物足りなくなっていきます。

宮城峡もそんなお酒の一つで、もしも宮城峡をじっくり知るなら、トゥワイスアップ(ウイスキーと常温水1:1)がおすすめです。慣れてきたら徐々に水の量を減らして味わって見て下さい。バニラの香りやフルーツのような華やかな味がよりはっきりと分かるようになるでしょう。マリアージュにはぜひチョコレートを。

もっともワインと違い、それほどスノッブになる必要はありません。ウイスキーは自由です。
水割りやハイボールが美味しいと思ったら、そうして飲んでも間違いではありません。

宮城峡は、これまでウイスキーをニガテにしていた人にとっても、きっと新しい世界を広げてくれることでしょう。

宮城峡
種別:シングルモルト
原産国:日本
容量:500ml
度数:43%
熟成:ノンエイジ(3〜5年?)
樽:ウイスキー、シェリー

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